極意、極意と随分と最近のこの日記に書いてきましたが、「結局は描くしかないのね。」という印象をお持ちになられたでしょう。
まあ、「スケッチパース」という”形あるもの”を表現するには、”形に出す”ことをしなくてはいけませんから、つまるところ手を動かすということになるわけですね。
「そうかあ~。描くしかないよなあ。しかし、描く前に”明確なイメージを持つことが大切”といっていたが、どうすればそれができるんだ?」
「ハイ、それも練習(訓練)しかありません。」、と言いますと何だかあれもこれも練習(訓練)することばかりで、お坊さんの修行のようになってしまう感じですね。
サラサラっとスケッチパースを描くのみならず、じっくりと描くスケッチパースであってもこの「イメージを明確に持つ」ことは大変重要なことなんです。
いきなり図面を見ながら線を引き始め、パースを起こしたものの出来上がりを否定するつもりはありませんが、そういった過程で仕上がったスケッチパースにはどうも”味気ない”気がするんですね。
「この空間をどうしたいんだ?どういう雰囲気のものにしたいんだ?」といった思いが出てきて、見ている者にはその設計意図や狙いや設計者の情熱が伝わってこないんですね。
不思議とそういうものなんですね。
あらかじめしっかりとしたイメージをもって描かれたものは、それがスケッチパースであろうともCADのパースであろうともじんわり伝わってくるものです。
では、「イメージを明確に頭の中に持つ」にはどういった練習(訓練)が必要なのでしょうか?
それは・・・・・、
「意識して観察する。意識して実体験・実体感する。」
ということです。これに尽きます。
”青い空、青い海”といって皆さんはどういった状況のものを思い浮かびますか?
「真っ青な雲ひとつない空に紺碧の遠浅の海」ですか?
「ハワイのような感じ」といったものでしょうか?
「あっ、私は伊豆の海だなあ~。岩と白波と雲のバランスがいいんだよなあ。」、これですか?
ひとつに”青”といっても様々な青色があり、またどのような素材感の青なのかによってもその青さが違うでしょう。そして、青を見た(体験した)状況によってもその印象度は様々ですね。
ここが重要な所なんです。
山間部にしか住んだことのない人に「海を語ってください」といっても無理な話なんです。
また、ただ対象をボ~ッと見ているだけでは、体の癒しこそなれどもその状況を”人に語る”ことはなかなかできません(伝わりません)。
受ける印象が強いと頭に焼きつきます。
だからこそ、こと細かく覚えていることができているのです。
逆に言いますと、印象が強いからこそ実は自然に観察をしているものなんです。
目で、耳で、匂いで、皮膚で、気持ちで、と全身全霊を集中して観察しているんです。
それも、ごく自然に行っているわけです。
この印象が、やがては頭の中に記憶として「イメージ化」されてゆきます。
こうした「観察・体験・体感」をしていることに”意識”を傾ける、つまりは「感覚の意識のアンテナを常に張り巡らせておく」ということです。
日常の何気ない物事でも、意識をもってあたってみますと実におもしろいことだらけであります。
「何でこうなってんの?」とか「へ~っ、こうなってたんだあ。」といった発見の連続です。
これが、印象の訓練につながり頭の中に残るイメージを豊かにしてくれます。
いわゆる「アイデアの”引き出し”が多くなる」ということになります。
こうすることで、「観察・体験・体感によって頭に記憶されたイメージのクローゼット(引き出し)」が出来上がり、その内容も豊かになってゆきます。
こうして豊かに熟成されたクローゼットから、スケッチパースを描く上で必要な”イメージ”を持ちだし、そして持ち出された様々なイメージをコラージュしながら整理して、ひとつの空間感・空気感・雰囲気を作り上げる・・・・・・。
これが、「さあ、スケッチパースを描こう。」とする時に、頭の中で行う”イメージを明確に持つ”ということの内容であり作業であります。
ですから、何気ない日常の一挙手一投足にしましてもなるべく”意識して”みましょう。
そして、それが目をつぶっても頭の中でビジュアル化できるか、イメージできるかを試してみましょう。
こうして練習(訓練)を積むことで、「形としてまだ見えていないものが、頭の中では見える」ようになってきます。これが、「イメージを明確に持つ」ということになります。
そうなりますと、ある意味あとはイメージ通り手を動かすだけでスケッチパースを描くことができる、ということになります。(頭の中のイメージを実際にペンで紙に写し書きをする、といった感じです)。
「見えていないものを見えているようになる(描く)」、このことを実際に手の動きとして練習(訓練)しているのが、本講座の”第1回目の講座”なんです。
立方体を使って、立体の見え方を学び立体の描き方を練習するわけですが、講座の中で「立体の見えない面を意識しましょう」とあります。
例えば、立方体は6面の平面によって立体化されていますが、どういう見方をしても2~3面しか見ることができません。
しかし私達は、「観察・体験・体感」によってそれが”立方体だとわかっている(イメージできている)”からこそ、2~3面しか見えない情報でも立体物として見ることが可能なんです。
もっと突っ込んだ言い方をいたしますと、「頭の中で、見えていない面をイメージして立体化している」、そういう作業を私達は自然に日常しているわけなんです。
本講座の第1回目講座を通して、このことを”意識して行う”ことでしっかりと頭の中でイメージができるよう練習(訓練)していただきたいと思っています。
これが、「基本中の基本=極意」でしたね。
頭の片隅にでもこのことを置いていただき、思いだしては「やってみる」くらいから始めてはいかがでしょう。
不思議な世界ですよ~、この世界は・・・・・。