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手描きスケッチパース講師の「ススム日記」

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ものの「構造」を知る大切さ

スケッチパースを描いてゆく上で、どうしても避けては通れないものがあります。

それは、「構造」です。

何も専門的な知識の事を指して言っているわけではありません。
言い換えれば「立体(物体)の成り立ち)」ということです。

第1回目の講座では、スケッチパースの基礎という事で基本立体の描き方を練習します。
正6面体(立方体)・直方体・円・円柱など、VPを意識しながら描いてゆくわけですが、練習時に重要な事が”微調整による感覚の訓練”です。
この”訓練”は、実は「構造」をしっかりと認識しておかないとできないものなのです。

例えば、「正6面体(立方体)は、正方形の面が6面で構成されている」ということを、しっかり
認識するということです。
「なんだ、当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、これが実際には意外にも”あいまい”なもので、「脳が勝手に視覚を”微調整(修正)”して物を見ている」ものなのです。
(”あばたもえくぼ”という諺もあったりしますが、手に取ったり肌で感じてみると「あれっ?こんなんだったっけ??」と、目で感じていたものとは全く違っていた、なんていう経験は誰でも持っていらっしゃるでしょう。人体は、様々な環境適合をしてゆく故に、このような「自己認識」を作りあげていったのかもしれませんね。)

逆に言い換えますと、「これは正6面体だから、”見えてる面は全て正方形だ(正方形のはずだ)”として見ている」ということなんです。
直方体や円、円柱、他の立体も同様にして認識しながら見ています。

この「立体認識」を確かなものにするために、第1回目の講座があります。
そして、「立体構造」をしっかり練習し、自分の視覚認識を客観的にみることができるように訓練をしてゆきます。そうしますと、様々な物の構造が次第にしっかりと”見えて”きます。
これが、本来の「構造認識」なのです。

これによって、外観スケッチパースやインテリアスケッチパースが「描けてゆく」ことになります。

外観スケッチパースでは、構造といっても「木造軸組み・RC造・鉄骨造など」専門的な知識は多少はあるにこしたことはありませんが、ここで言う「構造認識」の範疇では”積み木としての物体の成り立ち”としてしっかりと立面図や断面図が認識できていればよいのです。
(1階の直方体の上に、2階の立方体が乗っている。2階から飛び出した直方体はバルコニー、三角柱を2階の立方体に乗せれば屋根になり、サッシ・ドア・仕上げ(素材感)を描けば出来上がり、ということです。)

インテリアスケッチパースでは、基本構造は「床・壁・天井」の3面が決まっています。
多少、下がり壁や袖壁といった付加要素もありますが基本構造は上記の3面に違いはありません。むしろインテリアスケッチパースで必要な「構造認識」は、置き家具や椅子や造作家具や照明などといったインテリアエレメントについての立体認識になります。
例えば「ソファの構造は、台座の直方体があって、両側にアームの縦長の直方体が付いていて、いくつかに分割された座クッションの直方体が台座の直方体の上に乗っており、背の直方体があって、背クッションの直方体がたてかかっている」ということです。

椅子は特にデザインが豊富で複雑ですが、「脚・座・アーム・背」の基本構造に違いはありません。大まかなアウトラインとしての立体を描いて、そこから注意深く「脚の形状・座の厚みや形状・アームの長さや形状・背の形状」を確認しながら描き込みをしてゆけば、多少時間はかかりますが恐れるに足りません。
(椅子は、基本構造の各部分を”伸ばしたり曲げたり丸めたり縮めたり”といった変形でデザインが成り立っていますが、脚のない椅子はない(「サッコ」というイタリアの椅子(?)や”座椅子”といったものはありますが・・・)のでありますから、その基本構造をしっかりと認識できていればよいのです。)

「構造(物の成り立ち)」を知る(認識する)ことで、スケッチパースの描き方やスピードそして表情が変わってきます。
単に線を引いてパースを起こしそれっぽく描いても、それはそれで絵にはなっているでしょう。

しかし、この講座の表に表われないもうひとつのねらい(メリット)は、「スケッチパースを通してデザインの視野が広がる(広げる)」ことにあります。
またそれがフィードバックして、スケッチパースの向上に繋がります。

以上の事を頭の片隅に置いて、日々の受講・練習に臨んでいただくと幸いです。
by sketchpers | 2008-11-20 10:08