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手描きスケッチパース講師の「ススム日記」

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病室だけの話ではない話

今回は、スケッチパースを離れて「デザイン(設計・計画)」について少しお話をしてみたいと思います。

先日、私の友人が入院しましてそのお見舞いにいった時の話をさせていただきます。

私の友人M氏は、胆嚢摘出のために入院しておりまして、絶食しながら点滴のみの日々を送っているのですが、それ以外はといいますと何ら健康な人たちと変わらない状態なんです。

ですから、日中ベッドに横になっていなくてはいけないわけでもなく、トイレやシャワーは自分でちゃんとできる、そんな状態です。

ですから、2~3日も入院生活をしますといい加減身体が”なまって”くるようです。
そういう理由で、特に夜中には目が覚めてしまうことがあるそうです。
それも、ちょっとした「音」でも目が覚めてしまうそうです。

8人部屋の病室ですが、入院している患者さんはM氏を含めて4名。
ですから、そう息苦しさはないのですが、夜眠っている時に他の患者さんがトイレに起き上がる時のベッドのきしむ音や、点滴を吊るすパイプを引きずるキャスターの音で目が覚めてしまうのだそうです。

また、ベッド脇にある収納の扉や引き出しを閉める時に出る「ドン」という音や、カーテンを開け閉めする時のカーテンレールの音、そして以外にも夜勤の看護師さんの走る足音にも、目が覚めてしまうのだそうです。

当然ながら、他の患者さんのせき込む音やベッド上での治療の音などもあります。

「病室は静か」とばかり思いきや、実は思ってもみないほどに”音だらけ”の環境であることを知りました。
じっくりと身体を休めて治療に専念する・・・、といった環境とは少々程遠いものを感じました。

そのようなM氏の入院生活の話を聞いたあとでM氏がトイレに行った時に、私は彼のベッドに寝てみました。
どのような空気が流れているのか、音はどのように聞こえるのか、そして何よりも患者としてベッドに寝ている時にお見舞いに訪ねてくる人の顔がどのように見えるのか、そしてその印象(心理的)はどう感じるのか、を知りたくなりベッドに寝てM氏がトイレから帰ってくるのを待っていました。

先ず確認できましたのは、この「人を待つ」というある”目的(終点)”があるから意識もそこに集中できているわけでして、ベッド回りの狭さもまわりの音もそれほど気にはなりませんでした。

しかし、お見舞いの人や看護師さんはそうそう決まった時間に自分の所に来てくれるわけではありません。
そういう立場ですと、急に音に対して何故か敏感になってしまいます。
これでは、夜中静まり返った病室では、日中気にはならなかった音でも気にならざるをえないであろうことがよくわかりました。

「なるほどなあ~。」などと考えていますと、カーテン脇からM氏の顔。

ベッドに寝ている私の顔を見て笑っています。

この関係。目線は、M氏は「見下げ」であり、私は「見上げ」となります。
この関係は、物凄く心理的にこたえます。
どうこたえるのかといいますと、「見上げる方」はいかにも病人といった心理になってしまいます。
「病人なんだから当たり前」と思われる方もいらっしゃることでしょうが、この心理的な潜在意識は「病人を病人たらしめるもの」だとつくづく感じました。

「早く治して健康を取り戻し、元気で退院するぞ!」という意欲が湧かない関係(構図)となっているんですねえ。

M氏も私同様、設計・デザインの仕事をしていますので以上の話をお互いの立場も踏まえて色々と話し合いました。

このことは、病院に限らずあらゆることに通じる話でありましょう。
特に「音環境」につきましては、目からウロコ的な話がありましたので、インテリア設計やプロダクト設計に於いてはまだまだ研究やデザインする要素はかなり残っている、ということでM氏とは話が合いました。

ちょっとした「気付き」と「優しさ」で、おそらくは今の様々な環境は激変するように思います。

そこに、今後の提案のヒントが山積みされているように感じます。
by sketchpers | 2010-11-11 21:34